−灰羽連盟・前章・−
R−その少女は、一見すると、ただの田舎娘といった感じであった.− 言実「××から、転校してきました。」 R−喋り方もはきはきとしていて、このあたりでは、あまり見かけないタイプだった。 嫌いなタチでもあった・・。背はまあ、高い方。二重で、まつげも長い。 前髪は、眉の少し下あたりにぎざついて、後は肩のラインと並ぶ程度。 まあしかし、私には彼女が何者であろうが、関係のない事だが・・。− 言実「短い間ですけど、どうぞ、よろしくお願いします。」(ペコ)頭下げる 生徒「お願いしまーす。」 先生「えーっと、では席は・・、」 R(最悪・・、私の後しか、開いてないじゃない・・。) 先生「Rさんの後が開いてますね・・、そこに座って下さい。」 言実「はい。」 R(はあ・・。) 言実「・・・。」(ト・・ト・・ト)歩 R(まあいい・・、来月までの辛抱だ・・。) R−そして、それは、彼女が、横を過ぎ去るまで、と、うつむこうとした、矢先、 ・・彼女は、少しだけ静止して、私の方をみた、そして、次の瞬間だった。 私が見たこともない様な無垢な微笑みが、私にこぼれていたのだ・・。 何が何だか、分からなくなった。言い過ぎではない・・。本気の本気に、心が揺れたのだ。 私の眼では、捉えられない“光”をみて、私は、一瞬にして、視界を失い、 心に、浮かばせた感情は、驚嘆らしかったのだ。 たった一度、たった一瞬の、純粋すぎる笑顔は、暗く深く沈んでいた私を、惨めに照らしていたことだろう・・。 それから現実に帰った私は、慣れない笑顔を、彼女に与え返していた・・。 過ぎ去った後、私は、日常と違う何かを、いだいていた・・。動揺にも似ていた。 ただ、驚くとは、これをいわないのではないか・・。それは明らかに、その、少女がもたらしたのだと・・、 あの、一瞬の、揺れは私に何かを告げるものでも、あるのか・・。と。− R「・・・。」 R−いや・・、しかし・・、それは、ない・・。有り得ない・・。 何者もこの私を暗い海底より、引き出す事など・・。誰もできやしないのだ・・。 だから、あの少女も、今までのヤツ等と同じように・・。− R「そうだ、きっとそうだ・・。」 R−最初の彼女は、その程度にしか、映らなかった・・。− |
−あなたに出逢う−
・・そうだ、この私が、今いる世界は、ひとつの大きな海の様なものだ・・。 ・・その中を、様々な人々が漂っている、大きな海の様なものだ・・。 そして、その中で、私は、深海にいる。 とても、とてつもなく深い、海底にだ・・。 深海ってのは、言うまでもなく、・・暗い。 その闇というものは本当に、全てから光を奪う。周囲の音、情景から、そして、私自身からも・・。 だから、きっと、あの少女も、私が見えていないだろう・・。 その微笑みの光は、深い闇に消し去られてしまっているのだから・・。 そう、きっと、私の横で、私に笑いかけた、樋山言実という少女も・・・。 |
言実「えへへ・・。」照れ笑 R「何・・?」 言実「え、うん・・。その・・、Rさんて、いいひと、だね・・。」(ニコ)笑 R「・・え・・?」 言実「ほら・・、朝、私が挨拶したとき・・。返してくれたでしょう?」 R「あ、うん・・。」(挨拶・・、だったんだ・・。) 言実「・・、だから・・、いいひと、だね・・。」 R「そんな・・。」(ニコ)笑(まさか・・。そんなコトは、有り得ない・・。) 言実「うううん。謙遜しないで。・・やっぱり・・・・。あ、あのさ・・。」 R−その後、彼女はごにょごにょと、何かを言っていたが、外の雑音にかき消され、無の音に吸い込まれていた。− R「・・え?何?」 言実「・・え、あ・・、な、なんでもない・・。・・あ、私、お使い頼まれてるから・・。」 R「うん・・。」 言実「じゃあ・・。」(ニコ)笑 R「うん・・。」(ニコ)笑 R−彼女はそう残すと、焦った様子で、まるで子供のようにかけていった・・。 彼女が放っていた、光は、背を向けていたにも関わらず、私を大いに苦しめた・・。 そして、同時にあの“揺れ”が、再び私を震っていったのだった・・。− |
−「微笑み」と“微笑み”−
私に笑いかけた見知らぬ少女は、私を「いいひと」だと言った。 私が、彼女が笑いかけた時、微笑み返したからだと・・。 そう言って、彼女はまた私に純粋な「笑顔」をよこした。 そして私はまた、ウソの“笑顔”ををくれてやった・・。 しつこく笑った彼女は「やっぱり、いいひとだ」と残して去っていった。 無邪気すぎる彼女の後ろ姿は、眩しすぎて、見ることができなかった・・・。 目を反らした後、私は、彼女に背を向け、歩き出す・・・・。 ・・決して・・、うしろは、振り返りたくなかった・・・。 振り返ることなんて、できやしなかったけれども・・。 |
言実「・・Rさん。・・おはよ。」 R「おはよ・・。」 言実「・・・。」(ニコ)笑 R「!」(ニコ)笑 言実「・・ねえ、教室に行くまで・・、おしゃべり・・しよ。」 R「うん。」 言実「・・、実はね・・、」 R「うん。何。」−彼女は、話慣れしていないのか、いちいち、私の表情に、気を配っている様で話ていた・・。− 言実「私ね、何処か、田舎の方でね、お風呂屋さんしたいなぁって、ちょっと夢みたいなモノ、持ってるの。」 R「へぇ・・。そうなんだ・・。」 R−彼女は笑っていた・・。− 言実「あはははは。」 R「・・フフ。」−楽しそうに・・。それは、眩しすぎて、苦しかったけれど・・ 私は、この教室までの廊下が、あと少し長ければと、自然と心のどこか隅で思っていた・・。− −何故か・・。その答えは、私自身ですら、分かってはいなかった・・。 ましてや、この光の少女も・・。それを、知る由など、なかった。・・しかし、今はただ・・。− |
−シャイニング・マーメイド−
それから、彼女は、良く私に話しかけてくるようになった。 夢の話をしている時の彼女は、あまりにも、純粋すぎて・・。眩しすぎて・・。 私は見ることはおろか、彼女の、明朗たる声を聞くだけでも、苦しかった・・。 そんな彼女は水面を、近く確認して、悠々と泳ぎまわる、一人の人魚の様な存在なんだろうなと、 希望あふれる姿に思いを馳せた・・。 ・・・・全く違う彼女だったけれど、底から仰いで、全くもって、届かない様には思えなかった。 それは、彼女の純真さ故かもしれなかった・・。 苦しいけど、どういうわけか、・・側にいたい・・。 彼女を無意識に求める私が居た・・。 ・・光を、求める私が・・。 |
R「・・今、なんて・・言ったの?。」 言実「・・うん・・。だから・・。」 R−突然だった・・。 − −それは、その少女にであって、二週間あまりが、過ぎた日の事であったろうか・・。 いつものように、靴箱の角で待ち合わせて、教室まで、歩きながら、おしゃべりをして、 その終わり、教室に入ろうと先を歩きだした私の背中に、その言葉は、かけられた。 ・・私の世界は、一時停止して、私を、かつてない“揺れ”が、通りすぎていった。 ・・ゆっくりと振り返った私の目を、恥ずかし気に赤らめている彼女は、なるべく見ないように、うつむき、挙動不信だった。− R「・・・・。」 言実「・・・・ダメ・・かな・・。」 R「ダメな訳ない。」 言実「・・じゃあ。」 R「うん、いいよ、・・ともだちになろ・・。」 R−次の瞬間の彼女は、無邪気すぎる少女そのものであった・・。 私は、痛みというか、苦しみとういう感情を抱いてはいただろう・・。 しかし、彼女に望むという・・、光に望むという・・、感情のほうが、大きかった・・。− −・・何かが、溢れていった・・。− |
−開かれた瞳−
彼女の口から発せられたその言葉は、深海魚の如く閉じられていた私の瞳を、そっと、開けさせた。 薄目の先に覗く世界には、淡く、光が差し込んでいた。 少しずつであっても、私は、浮上しているのだ。 ・・彼女に会って・・。彼女に関わって・・。彼女と過ごして・・。 彼女は言ってくれたのだ・・、こんな私を・・、「ともだち」だと・・。 だから、信じたいと思った・・。 初めて 、他人を信じていいと思えた・・。 瞳の奥に、今まで、溜められていた涙の様なモノは、細長く光を得た隙間から、形を変えて、溢れ出て行った・・・。 |
R−久々に、朝早くに目が覚めた・・。 眠い眼をこすると、カーテンの縦長の隙間から射し込む、美しいオレンジの線が明確になった。− −・・いつもは、そういう事はないのだが・・、 今日に限って、まるで、何かに誘われる様に、私はユラユラと窓まで、引き寄せられていった。− R「・・。開けるの?」(スー)カーテン開 R「・・・・・。」 R−そこには、オレンジが満ちていた・・。光が、満ちていた・・。− R「・・・・。綺麗・・。」(まるで・・。あ。) R「・・そうか、呼んだのは、やっぱり・・、君だったんだ・・。」(ニコ)笑 |
−昇陽−
東から出てくる太陽をみた。 綺麗なオレンジをしていた・・。 そして、その初初しさと輝きは、私に真先に彼女の笑顔を思い立たせた・・。 それを掴もうと手を伸ばすと、恥ずかし気に、ビルの影に潜り込んだ。 ・・そうだ 、彼女は、きっと、海を漂う、人魚じゃなく、唯一の、太陽なんだ。 だから・・。瞳を伏せると、彼女の光が・・、こんなにも近くに在る様に、感じるんだ・・。 こんなにも、私を導こうと、してくれてるんだ・・。 握りしめた手を、胸にあて、私は、再度、瞳をとじた・・・・。 |
R−彼女と出会って、一ヶ月が経とうとしていた・・。 その朝は、どれだけ待っても、彼女がやって来なかったので、私は独りで、教室へと歩いていった。 少し入ると目先に彼女がいた。・・いつもの、変わらない笑顔があった・・。− クラスメイトA「言実ん家って、牧場だったの?マジで?」 言実「うん、牛とか馬とか、いっぱいいるんだよ!」 クラスメイトB「ホントに?チョーうらやましぃぃ!」 R「おは・・・。」 言実「きゃはははは。・・ホントに?じゃあ今度遊びにおいでよ!」 R−言実・・、あんなヤツと何、話しているんだろう・・。 ・・。あんなに、楽しそうに・・。 あんな顔・・、私には見せたこと・・、ないのに・・。 なんで、私と話す時より、楽しそうなの・・?どうして、どうしてなの? 私って、そんなに、話してて、おもしろくない?それでも、言実、なんであんな、ヤツなんかと。 見捨てるの?言実も、私を見捨てるの?私を、傷つけるの?− |
−変わらない笑顔−
純粋すぎる故なのか・・。 純粋すぎるからこそ、私の・・、本当の本当の私のことなんて、わかる訳はなかったのか・・。 最初から・・、私がバカだったのか・・。 彼女は、私を裏切った・・、のだろうか・・・。 私の思い上がりだったろうけど・・。私は、しっかりと傷ついている。 届きそうだった光を失ったような、手にしかけた何かが、蒸発して、再び気体へ散っていく様な感覚だった・・。 彼女は、相変わらず笑っているけれど・・。 それが、私を、再び、海の奈落へと、誘っていった・・。 R−そして、聞こえる、あのセリフ・・「ともだちになろ!」・・・・・・・・。− |
R「まただ・・。」 言実「あははは。」 R「また、あいつと・・。」 R−彼女がやって来て、一ヶ月と二日・・。私は、彼女を待たなくなった・・。 何故なら、彼女は二日前から、私よりも面白いヤツと楽しく登校しているらしいのだから・・。 ・・当然、私は必要ないだろう・・。ほら、今だって、まるで見せつけるように笑っている・・。 楽しそう・・。そりゃそうだよ、あいつは、彼女にとって「ともだち」なのだから・・。 ・・・。私も「ともだち」である・・。その差は、何なのだろうか・・。 いや、分かっている・・。分かっているつもりだ・・。 面白いこと・・・。彼女にとって、・・いや、誰にとっても、面白い方がいいに決まってる・・。 ・・、所詮、私は・・、だ。・・、そうだ・・所詮私は・・。− R「・・・・。元々・・、友達なんて・・。」 言実「ねえ、ねえ、明日は何処いこうか・・?」 A「そうねぇ・・。」 |
−消えた光−
私は、彼女の「ともだち」である・・。 そして、私の光を連れ去ってしまうあいつは、彼女の「ともだち」である・・。 それは、存在している、確かな事実で、彼女は知らないけれども、私は知ってるんだ・・。 彼女は、私と話す時よりも、あいつと話す時、とても、楽しそうな笑顔をする・・。 私には話したこともない様な話をする・・。 私は知らない、彼女を、あいつには、さらけ出してる・・。 ・・つまりは、そういうことだ。 彼女の中で、私は大きな存在ではないのだ・・。 私を傷つける、あいつよりも、はるかに、微々たる光なのだ・・。 彼女は、裏切った訳ではないが、私は、裏切られた・・。 それで、十分だった・・、望みを見失うには・・。 |
言実「ねえ、R・・。」 R「・・・。」 言実「おしゃべりしましょ・・。話たいことがあるの・・。」 R「・・・。」(話たいこと・・?ああ、もう朝、一緒に登校もしてないし・・、しゃべる機会もないことだし、そろそろ、「ともだち」やめようって・・?) 言実「R・・?」 R「・・・・。」(うるさい・・。) 言実「どうしたの・・?R、具合でも悪いの?」 R「・・・。」(うるさい・・。) R「・・ごめん、私、課題、まだ全部できて無いから・・。」 言実「え・・、そうなの・・。うん、わかった・・。・・、その・・、ごめんね・・。」 R「・・・。」(早く行け・・。) R−・・私は拒んだ・・。− |
− 沈黙 −
もういい・・。消えてしまえ・・。あいつも・・、彼女も・・、私も・・。 いっそう、この世が全て、消え去ってしまえばいい・・。 全部が無くなってしまえば、全部が皆、平等になる・・。一石二鳥だ・・。 もし、それが無理なら、私だけでも・・。ここから、居なくなりたい・・。 もし、天国みたいな場所があるのなら・・。忘れたい・・、全てを・・。 全てを忘れて・・、幸せになりたい・・。 万が一にも、有り得ない妄想もしていた・・。 しかし私はどこまでも、本気だった。本気でそうあれば、と望んでいた・・。 明日を見据えていた、瞳孔は、完全に光を失って、暗い、黒い、闇ばかりを、ただ、見つめていた・・。 |
R−彼女がやって来て、そろそろ二ヶ月だろうか・・? この一ヶ月、ずっと、我慢していた。しかし、限界だった。 拒み続けてきた、私であったが、遂に踏ん切りがついたのだ。 “私”が本気になれるよう・・、月の薄明るい夜に、丘の団地の公園で、待ち合わせた・・。 ・・彼女は、私より早く来ていた・・。そして、子供のように、ブランコに揺られていた・・。 今宵の月の様に、淡い光を放つ夜行灯は、そんな彼女を、照らしたり、照らさなかったり・・。 そして、私を見つけた彼女は、ブランコから降りて私の方にかけてきた・・。− 言実「びっくりしたよー。こんな時間に会いたいなんて。 私、夜に外、出歩くの、初めてだから、ここまでくる途中、すっごく恐かったんだよ。」 R「うん・・、話たい事なん・・。」 言実「待った。その前に、私の話を聞いて・・。」 R「・・・。」 言実「・・私は、一ヶ月も前から話たかったんだからね・・。いいでしょ?」 R「うん・・。」 言実「よし・・。」(ス)頭下げる 「ありがとう・・。」(ニコ)笑 R「何・・・?」 −また、彼女は、笑っていた・・。いつもの笑顔で・・。あの時の笑顔で・・。− 言実「ありがとう・・、Rのおかげで、色んな人と、友達になれた・・。」 R「え・・?」 言実「Rが、友達になってくれたから・・、みんなに、勇気出して、友達になろうって切り出せたんだよ・・。 だから、ありがとう・・。」 R「あ・・・。成程・・。」(そういう事か・・。) (そう、だったんだ・・。) 言実「え・・?」 R「・・つまりは、私を踏み台にしたのね・・?」(危ない、危ない、また騙される所だった・・。) 言実「何・・、言ってる・・の?」 R「そうなんでしょ・・、最初から、このクラスの中で、一番弱そうな私を使って、 このクラスの空気を、読もうとしてたんでしょ・・?そんな、演技までして。」 言実「違うよ、聞いてR、私、こんなふうに、バカだから、前の学校では変なヤツだって、友達出来なくて・・、イジメられて・・、だから私・・、」 R「もう、いい加減にやめたら・・?分かっちゃったんだから・・、卑怯者・・。」 言実「・・ち、違うよ。さっきから、どうしたの・・?」 R「だから、もういいじゃない・・。その往生際の悪さは、さすがクソAの親友ね。」 言実「あの人は悪い人じゃないよ。」 R「かばうんだ・・。大親友だもんね。・・私なんかより、大切だもんね・・。」 言実「違うよ・・そんな事ないって!なんで、そういう事言うの?」 R「うるさい・・どうせあんたも、私のこと、見下してるんでしょ?」 R「どうせ、私を傷つけるために近づいたんでしょ?」 言実 「・・・!」(パチン)平手打ち R「!」 言実「バカ!そんな訳ないじゃん!!突然、何、言出すのよ。 ・・私は・・、本当に友達になりたかったから・・なれると思ったから・・。」(ツー)涙 R「ほら・・、私を傷つける・・。」 言実「!。R!」(フュウ)平手打ち (ピト)止める R「また傷つけるの・・?」(ツー)涙 言実「違う・・。」 R「違わない。」 言実「・・・。」 R−その瞬間の彼女の沈黙は、私を、完全に、底にたたき落とした・・。− R「やっぱり、そう、なの・・。そんなに、私って・・・。」(ツー)涙 言実「・・・。そんなこと・・。」 R「わかった・・。・・私なんか、いなくなればいいんでしょ!?」(ガッ)手すりによじ登る 言実「ダメ!!何するの!?」 R「決まってるじゃない・・。」 言実「や、やめてR・・。」 R「サヨナラ・・。・・・・。」(ス)手すり放す 言実 「い、いやあぁぁぁぁ!!!」 |
−死と再生−
声が聞こえる・・。 彼女の声だ・・。 何を言っているかは、わからないけれど・・、大声で、何か叫んでいる・・。 そして、彼女の顔が映った時、月光に映える、大粒の雫が私の頬に降ってきた。 ぼやけていく中で、それだけがはっきり見えたのだ・・。 遠くなって、小さくなって行った彼女の最後の発声は、どこか、鳥の鳴き声に、似ていた・・・。 ・・嗚呼、これで私は、ここでない場所に行けるのだ・・。何もかもを忘れられるのだ・・。 不思議だ・・、幸せなはずなのに・・、幸せなはずなのに・・・。 |
−何故、忘れたいの・・・。− −ねえ、思い出して・・・。− −暖かい、頬に降る−、 −涙の願い・・・。− R「ここは・・。」 − 何故、震えながら・・・。− −今、求めあうの・・・・。− −君だけを、何度でも、− −抱きしめたいから・・。− R「私は、空を落ちてるんだ・・・。」 R「不思議。なんで恐くないんだろう・・。」 鳥「カアー」(パサパサ)羽 R「私のこと、心配してくれるの・・?」 R「フワフワして、暖かくて・・、でも胸がチリチリする・・。」 R「恐くないけど、心臓が冷たい・・。」 鳥「カアー」(パサパサ)羽 R「無理だよ・・。でも、ありがとう・・。」 − 鳥「カアー」(パサパサ)離− R「っ・・!!あ・・!!」 (フュー )落下 −青い星の海、波間に漂う羽。− −消えて行く、哀しみは・・。− −明日への、祈りなの・・、− BLUW FLOW・・・ R「・・・。」(フュー)落下 −灰羽連盟− −十数年後・・。− 言実「・・・・。」 鳥「・・・・。」 言実「・・・。」(ニコ)笑 鳥「カアー。カアー。」 (パサパサ)羽 言実「そうね、・・、ありがとう・・。」(ニコ)笑 繭子「言実さん・・。」 鳥(パサパサ)離 繭子「どうか、したんですか・・?」 言実「・・急に、鳥に、お礼が言いたくなっちゃってね・・。」 繭子「はあ・・。」 言実「・・・・。あの子を、引き留めに行ってくれて、ありがとうって。」 繭子「あの子・・?」 言実「私の、初めての、・・親友・・。もう、遠くに、・・行っちゃったけどね・・。」 −鳥「・・。」 (パサパサ)飛− ラッカ−私の夢の中で、あの鳥が私に残した、言葉・・、 日々の中、時々心に浮かんでは・・、その度に胸のあたりを、冷たくする・・。 まるで、夢の繰り返しのように・・。 そして、鳥の骨を見たとき・・、私が感じた、不思議な感情は、いつしか私を、確かに通りぬけたものだった・・。− ラッカ「・・“コトミ”・・。」 −誰かの名前を、囁いていた・・。− |
作者 itsuki さん
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