「巣立ちの日」(礫)



サァ
草が風に吹かれて心地いい音が響く
空には満月がぼんやりと浮んでいる
「きれい・・・だな」
「うん そうだね」
氷湖がぼんやりとした口調で呟く
礫はワンテンポ遅れて答える
ふと氷湖は月を見ている。
そして、また視線を満月から礫へと移す
礫の頭の上にある光輪が薄れては消えそうに浮いている
いや、たゆとうている

こうして見ると、灰羽は危ういものだ。
こうして存在しているものの、記憶を取り戻せばすぐに消えてしまうのだから。

「お前、巣立つ前なのに俺んとこに来て大丈夫なのか?」

氷湖が心配そうに言う
礫が首を振る

「いいんだ ただあんたに会いたかったんだ。」

黒い瞳が氷湖を見つめる
その悲しげな瞳が氷湖の心を締め付けた
そして、思わず礫を抱きしめた。

「行くなよ」

思わず言った言葉に自分自身、驚いた。
(俺は礫をこんなにも思っていたのか・・・)
そう、感じた

「ごめん・・・」

礫は申し訳ないように答える
氷湖は腕を緩め、礫の顔に触れる

「好きだ」

「ありがたく受け取っておくよ」

氷湖は礫に軽くキスをする

礫の頭、後輪に目を向ける
頭の上に浮いているソレはさっきよりも薄くなっている気がした

「今まで、悪かった」

「もう、いいんだ・・・
私は、あんたと出会えたこと、忘れても、忘れない。
だからあんたも私のこと忘れないでほしい」

氷湖はくすりと笑い

「あぁ、これで借りはチャラだな」と言う

礫も答える
「うん・・・」

氷湖の腕から、礫が離れる
「もう行かなきゃ。」

「あぁ。」
氷湖から礫が離れ、森へと歩いていく
いや、帰っていくというのが正しいのだろ、か

氷湖は気が抜けたように礫を見送る
礫は後ろを振り向かずに歩いていく

「なぁ」
氷湖は言った
「また、会えるよな」

「またきっと会える・・きっと・・」
礫は後ろを振り向かずに答える

そして、また森に向かって歩き出す

だんだん遠くなっていく礫の後ろ姿を見つめる
そして、森の中に礫は溶け込んで、見えなくなった

礫は当たり前だけれど
初めて会ったときよりも大きくなっていた。
そして、氷湖の心の中の礫も大きくなっていく
そして、今も・・・

こうしてる間も、ちりちりと焼けるような・・そんな感じがした。

叶わない思い
過去
現在
未来
それらを思いながら彼女を見つめていた

彼は、この彼女の様に巣立つときが来るのだろうか

そして、彼女と会えるのだろうか?

それは分からない。

しかし、一つだけ言えることがある

彼女と出会えたことが彼にとって救いになった
ということだ

今まで彼女と過ごしてきた時、物、思いを刻み込み、
忘れたとしても
その魂に刻み付けられるだろう

そして、2人はまた会えるだろう





*イメージソング......倉木麻衣 mi corazon









作者 151cm さん



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